心に響く言葉
詩の出処
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岡本弥太 詩集「瀧」より
by Ryuta
一夢 酒に とぼけて酔ひしれてゐる短いふるさとの花の春の日があつた あぢけないよあけの夢のなかで 山のさくらの静かにちつてゐることを とほくから眺めてゐた ゆふべの とぼけた酒のあいだに おのれのこどもと雀の歌をうたつたように思つたが あれも侘しい一夢であつたのか 夢のさめたまくらもとの こわれた茶瓶の水は水晶のようにあぢけなくおいしいものであり とぼけた父の眼がしらに何か世のはてからの涙がきてゐた