詩の出処
Link
岡本弥太 詩集「瀧」より
|
急湍
ただ岩と岩との畳に咲く
藤と岩つゝじ
それから青光と炎を吐く急湍
おれはこの深山に彷徨して
現代の天地の跼をみてゐるだけだ
おれは眇のおとこ足の甲虫のよう曲つた嬬にあいさつして
あいつら蛇の鎖を習つてゐる
おれは
沸々と滾る青湍の面に
湧きあがつてくる壮烈な天地人の格闘図を盗見してゐる
おれはそれから熊さゝを分ける
ぶとに吸はれる
霰を頭蓋で受ける
おれはあさ日を蝎と等分する
おれは
なべての醜悪と光りなきものに半身を分つ
おれは天国と地獄の急湍にかゞむ
|